
厳しい寒さが続きますね。身体の冷え込みには十分お気を付けください。
世間で、「夏がいちばん好き」という人はけっこう多くいますが、
「冬がいちばん好き」という人には、個人的に今までに会ったことがありません。
逆に、「寒さがとにかく苦手・嫌い」という人にはたくさん会ったことがあります。
私自身も、冬より夏、寒いより暑い方が、好きです。
とは言え、「寒さ・冬」は、住む場所を大幅に変えない限り毎年必ずやってきます。
冬の間は動物が冬眠するように、人間もただひたすら春が来るのを待ちわびつつ耐え忍ぶしかないのでしょうか…?
ふつうはそうなので、春にまつわる歌がたくさんあったり(ビートルズのHere comes the sunとか)、
春から新学期や新年度が始まったり、引っ越す人が多かったり、
とにかく「寒い冬が終わった! よし活動するぞ!」という気持ちになるわけです。
春の訪れは本当に素晴らしいものですが、
ただ、冬や寒さはただ耐え忍ばなければいけないネガティブなものかと言えば、そんなことはありません。
(スキーやスノボやウィンタースポーツが好きな人にとっては元からそうだと思いますが)
寒さは、実はある意味で身体にとても良いもので、私自身は「寒さは栄養」だと思って味わうようにしています。
『養生訓』などで有名な江戸時代の儒学者、貝原益軒は、
『和俗童子訓』という教育書の本の中で、子どもを育てるコツとして
“寒”(寒さに慣れさせること)と“粗食”(ぜいたくな食事を与えないこと)を挙げています。
また、北欧諸国では、赤ん坊を屋外に置いて寝かせると元気に育つという伝統があるそうで、今でもよく見られる光景なのだそうです。
そのように育てた子供は、風邪を引きにくく、病気にならない、なりにくいのだそうです。
単純に寒さに慣れていく中でストレス耐性が上がり、
また、外にいることでいろいろな菌への耐性もつくのでしょう。
寒さのメリットについてもう少し掘り下げてみます。
実は、寒さをはじめとしたストレスは、一定程度を超えると身体に害を及ぼしますが、適度であればむしろ身体を健康にします。
キーワードは、「ヒートショックプロテイン(HSP)」と、「タンパク質のフォールディング(折りたたみ)」です。(HSPももちろんタンパク質です)
人間の身体には数千万種類のタンパク質があり、
身体そのものがタンパク質でできていて、タンパク質によって代謝し、タンパク質によって活動している、と言って大方正しいです。
それくらい、タンパク質は人間(動物)の身体にとって重要なものなので、ギリシャ語で「第一の物質」を意味する Protein(プロテイン) と呼ぶわけです。
余談ですが、日本人は単に言葉の響きだけで幼稚な先入観イメージを持つことが多く、
「プロテイン」という言葉の響きが何か人工的で強力でいかがわしいものを連想するようで、
「俺はプロテインなんか飲まない」などと言う人がいるわけですが、
何のことはない、プロテインとはただ単にタンパク質のことで、それを取らないのであれば生きていけません(笑)。
「リコピン」もそうで、言葉の響きがかわいいとかで、やけに女性に人気で知名度があるのですが、
リコピンは植物に含まれるファイトケミカル(phyto chemical)の一つで、他の植物にも同様に有用な成分は多種類あります。
別にリコピンだけが女性のお肌や健康に良いとか、そういうことはありません。
個人的には、こういう幼稚で感覚的なところは日本人の短所だと思っています。(長所になるときもありますが)
すみません話が逸れました。
タンパク質です。
タンパク質の元になるアミノ酸はたった20種類しかないのに、タンパク質は数千万種類もあります。
これは不思議です。
なぜ、そんなにたくさんの種類が作れるのか…?
その答えは、「タンパク質の立体構造」と「分子量」です。
タンパク質は、平面的にではなく、立体的に生成され、折りたたまれます。[フォールディング]
そのため分子量が巨大なので、とてつもなく多種類のものが作れるわけです。(それだけ消化にも大きな負荷がかかるということです。)
また、タンパク質は正しくフォールディングされることで初めて、その固有の働きを正しく行うことができます。
体内に数千万種類あるタンパク質の「立体構造が正しく生成される」ことは、生命活動にとって極めて重要なことです。
タンパク質は形が命なのです。
しかし、実際にはさまざまな要因でタンパク質の立体構造は歪み(タンパク質の変性)、正しく働くことができなくなります。
そこで活躍するのが、「ヒートショックプロテイン(HSP)」です。
飢餓、虚血、低酸素、高温、低温、細菌感染、炎症、活性酸素、紫外線といった、
通常とは大きく異なる環境(生体ストレス)にさらされると、細胞はこれに抵抗する物質であるHSPの合成を促進します。
このHSPが、
出来上がりつつあるタンパク質の構造をきれいに整えたり(フォールディング)、
ちぐはぐになったタンパク質の形を整えたり(リフォールディング)、
間違った立体構造のタンパク質を一旦ほぐす(アンフォールディング)、
といった働きを行います。
(おわかりのようにこのHSP自体もタンパク質です。このように体内では無数のタンパク質が代謝活動を行っています。)
これが、私が「寒さは栄養」と思い味わっている具体的な理由です!
つまり、体内の最重要物質、第一の物質(プロテイン)であるタンパク質の、
最も重要な「折りたたみ(フォールディング)」を正常化してくれるのです。
HSPは、寒さだけでなく暑さやその他の適度なストレスによっても生成されるものですが、
冬の寒いときに、
「この寒さというストレスによって今まさにHSPが作られて、体内の数千万種類のタンパク質の立体構造が整えられるのだ!」
と思えば、ただ単に耐え忍ぶだけのネガティブなものではなくなりますね。
寒い冬を乗り切るための知識・考え方として、ぜひ参考にしてみてください。
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