医療大麻 高樹沙耶さん逮捕

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元女優の高樹沙耶さんが大麻所持容疑で逮捕されたというニュースが連日報道されています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161025/k10010743191000.html

いろいろ議論も交わされているようなので、こちらでもテーマにしてみたいと思います。

◆そもそも医療大麻とは何か?
この方は、医療大麻の解禁を訴えて選挙にも出ていたわけですが、そもそも「医療大麻」とは何なのか? マリファナと同じなのか、違うのか? この辺りをまず整理整頓したいと思います。そのために、まずは大麻草について簡単に理解します。

◆大麻草とは
植物としての学術的な知識はひとまず置いておいて、大麻草は、実は人間の歴史と深く関わりのある植物です。日本では、古くから神社のお札、しめ縄、神主の衣装などに使われてきて、神社の大部分は大麻でできていると言っても良いくらいで、徳島県鳴門市には大麻神社という名の神社もあります。他には、下駄の鼻緒、産着、相撲の横綱の化粧回し、たこ糸、畳の縦糸、花火の発色剤、蚊帳等に大麻草の繊維が使われています。また、天皇陛下が即位するときには必ず大麻草の衣服を着ることになっています。現代では大麻繊維産業はかなり衰退していますが、私たちにとって最も身近なものは、七味唐辛子に入っている麻の実、即ち大麻草の種子です。

書籍からもいくつか引用してみます。

「日本では、福井県にある縄文時代の鳥浜遺跡(約1万年前)から大麻草の種子と繊維が出土しており、この時期に渡来してきたものと考えられている。大麻草は、三草四木の中の1つとして、特に江戸時代から昭和初期までは重要な栽培作物と位置付けられていた。繊維を取って紐や縄にし、織って衣服や袋を作り、残った茎=オガラは茅葺屋根の材料に、繊維くずは土壁や漆喰の材料に、燃やした灰は携帯用カイロ灰に、葉は肥料、根や花穂は薬に(←重要)と、全て無駄なく、生活の至るところで使われてきたのである。」
〈ヘンプ読本〉より

また海外でもやはり大麻草は、以下のように常に重宝されてきた植物です。

以下〈大麻草と文明〉より引用
「16世紀イギリスでは、人気の高いイギリス国籍を取得する条件として、王族の発令によって外国人による大麻草の栽培が推奨され、それに従わない者は罰金を徴収されることもあった。」

「アメリカでは1631年から1800年代前半まで、大麻草は貨幣と同等の扱いがされていた。200年間にわたって大麻草で税金を支払うこともできた。物資不足の折には、1763年から1767年のヴァージニアなどでは大麻草を植えないと投獄される事態も発生した。」

「ベンジャミン・フランクリンは、大麻草を原料にした製紙工場をアメリカで初めて創設した。これにより、書籍や紙をイギリス本国に依存する必要がなくなり、植民地で自由な報道が可能となった。」

「様々なマリファナやハシシ(大麻樹脂)抽出液は1842年から1890年代までの間、全米で一、二を争う処方薬となった。」

「大麻草の抽出薬は、イーライ・リリー社、パーク・デイヴィス社、ティルディンス社、ブラザーズ・スミス社、スクイプ社などといった欧米の企業や製薬会社が製造していた。この時期、これらの薬による死亡例は1つも確認されていない。また、この抽出薬に関しては濫用やそれに伴う精神疾患の類も報告されていない。」

大麻草について、1998年にテレビ朝日で放送された大麻の特集番組(ダイジェスト版 約10分)がYouTubeにアップされていました。大麻草が相当大きな発展性と可能性を持つ植物であることがわかりやすく紹介されています。地上波の番組で「大麻」と30回以上は言って絶賛しています。

宇宙船地球号・大麻は地球を救う

◆医療大麻とは
話を医療大麻に戻すと、これが一般的に世に広まる大きなきっかけとなったのは、2013年夏にアメリカCNNで放送されたWEEDという番組です。以前はYouTubeに日本語字幕の動画もありましたが、現在はなくなっています。内容は、重度のてんかん症状に苦しみ続け、あらゆる治療を試しても良くならず、致死は確実とみられていた3歳の少女が、医療大麻を使用することで奇跡的に回復を果たした実話(とその他)です。それに関して別の動画があったので紹介します。

動画の中にも出てきていますが、大麻草の成分のうち、CBD(カンナビディオール)と言われているものが医療大麻に使われている成分です。一方、マリファナになるのはTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分です。なのでこの植物栽培者が、”Low THC, high CBD(THC濃度が低く、CBD濃度が高い)” と言っているわけです。この割合は大麻草の種類によりさまざまに異なります。

現在アメリカでは、医療大麻(CBD)・嗜好大麻(THC)とも連邦法では依然として違法であり、州レベルでは、①連邦法と同じく全て違法 ②医療大麻のみ合法 ③医療大麻も嗜好大麻も合法 と州ごとに法律の規定が違います。上の動画で「コロラド州に住んでいて本当に良かった」と母親が言っているのは、アメリカで大麻合法化運動の中心になったのがコロラド州だからです。あとは西海岸のワシントン州、オレゴン州、東海岸では首都のワシントンDCも、両方とも合法です。カリフォルニア州でも嗜好大麻合法化の動きが進んでいるようです。

cbd_usa_blog

◆マリファナは麻薬か
医療大麻が世界中で多くの人の命を救ったり、健康に役立っていることは事実です。イギリスでは、THC:CBD=1:1 の「サティベックス」という医薬品が使用されています。THCとCBDは相反する作用を持つ成分ですが、1:1の割合になるとそれぞれの効果や相乗効果が最も高まるようです。この製品の製造開発には日本の大手製薬会社が深く関わっています。
アメリカの国立薬物濫用研究所(NIDA)が1994年に発表したのは以下です。

nida_blog

プラス最も重要な点は、マリファナを含む大麻草の成分には「致死量(fatal dose)がない」ということです。アルコールも化学薬品も急激に摂り過ぎれば命の危険をもたらしますが、大麻草は、マリファナでもどれだけ大量に摂取しても死ぬことがない、死ぬことができません。マリファナが無害なものかどうかはともかく、アルコールやニコチンと比較した場合に、明らかに後者の方が有害であることは、数々の調査からも間違いないと言えます。(詳しくは〈マリファナはなぜ非合法なのか?〉参照) ちなみに、アルコールを体内で無毒化する代謝プロセスを見ても、体に相当大きな負担をかけていることがわかります。冷静に考えると、コンビニでアルコールやタバコが売っているということは、相当重大なことであると言えます。もちろんこれは経済面での理由です。経済面で言うと、大麻草は上記動画にもある通り相当幅広い産業に波及するので、アメリカでは大麻を解禁して一般課税すれば24億ドルの税収増、酒やタバコと同様に高率で課税すれば62億ドルの税収増になるという試算があります。(〈悪法! !「大麻取締法」の真実〉参照)

◆なぜ大麻は悪者扱いされているのか
ここまでを読むと、当然にこの疑問が出てくるはずです。「それほど体に良く病気も治り、昔から価値が認められてきたものなら、医者が使って世に広まっているはずではないか、それが禁止されているのは何らかの確かな理由があるはずだ」 これは当然で、もちろん何の理由もなく特定の植物が違法化されることはありません。

これについてとてもわかりやすくまとまった動画があったので紹介します。

◆大麻取締法
現在日本では「大麻取締法」により以下のように規定されています。

第1条
この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)、ならびに大麻草の種子及びその製品を除く。

第4条
何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のために交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。

つまり、七味唐辛子に大麻草の種子が入っていても大丈夫なのは、1条但し書きによります。また、高樹沙耶さん(や他の人も)が訴えていた医療大麻解禁というのは、この第4条の二項と三項を変えようよ、なくそうよ、という主張です。

上で見たCBDは、大麻草の茎と葉から取れます。
THCは、大麻草の葉と穂から取れます。
ということは、茎から取れたCBDであれば、第1条はクリアなのですが、それを医薬品・医療大麻として用いることは第4条の二項、三項に抵触するので、現在はできないわけです。さらに言うと、茎から抽出したCBDで、医薬品でなく食品であればOKとなります。

ということで、これでもかなりダイジェストではありますが、大麻草について紹介してみました。

私は個人的には、特に強硬や急進的な大麻解禁論者や運動家ではありませんが、純然に一植物として、大麻草は人間にとって相当有益な植物であることを揺るぎなく知っています。実際にも食品のCBDを使用してかなり良い効果も実感しています。

以上 今回の件を考える参考になれば幸いです。

◆参考動画
1.大麻草を違法化したのは上記動画の通りアメリカ合衆国ですが、なんと第二次世界大戦中には大麻草を一時的に解禁して増産に次ぐ増産をしていました。当時のプロモーション動画。(コロラド州に住むアメリカ人の知人が教えてくれました)

要するに、軍服、船のロープ、パラシュートのロープ、火薬、等々に大麻草の繊維が最も強固かつ安価で必要不可欠だったようです。そして戦争が終わるとまたすぐに違法に戻りました。いかにもご都合主義のアメリカらしい。

2.大麻草の成分にはCBDやTHCがあると説明しましたが、そうしたポリフェノール成分全体をカンナビノイドといい、現在のところ80種類以上が確認されています。カンナビノイドはガン細胞にめっぽう強く、そのメカニズムはまさに驚異的です。最新の研究に携わる医師たちがわかりやすく解説しています。

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